失敗を防ぐ繰り上げ返済の注意点とは?|住まいのお金FP相談室
住宅ローンを借りる際には毎月の返済額を定めますが、当初定めた返済額とは別に、住宅ローンの一部を早く返済する事が可能です。
これを繰り上げ返済(一部繰り上げ返済)といいます。
繰り上げ返済を行うことでローン残高を早く減らすことができ、減った残高部分に対応する利息も減るため、住宅ローンの総返済額を減らせる効果があります。
一般的な返済方法である「元利均等返済」の場合、毎月返済額に占める利息部分は、ローン返済が始まった当初が最も高く、返済が進むほど減少していきます。
このため、借り入れ時より早期に繰り上げ返済を行うと、同じ繰り上げ返済の金額でも利息節約効果がより大きくなります。
■繰り上げ返済の方法は?
住宅ローンの繰り上げ返済には、次の2種類の方法があります。
期間短縮型
毎月の住宅ローンの返済額は変えずに、借入時に決めた返済期間を短縮する方法です。
返済期間が短縮されるため、短縮された期間分の利息が軽減されます。
同じタイミングで「返済額軽減型」の繰り上げ返済を行った場合と比較すると、利息節約効果は「期間短縮型」の方が大きいという特徴があります。
「期間短縮型」は早くローンを完済でき、将来の家計収支を改善できます。
最近は住宅購入時の年齢も上がっており、会社定年後の高齢期にも住宅ローンの返済が続く方もいます。
定年後の老後資金に不安を感じる方は、「期間短縮型」を選ぶと良いでしょう。
返済額軽減型
住宅ローンの返済期間は変えずに、今後のローンの返済額が少なくなる方法です。
毎月の住宅ローン返済額が減りますので、その分毎月の家計に余裕が生まれます。
毎月の返済額が減るので、「期間短縮型」よりも繰り上げ返済の効果を実感しやすいです。
今後のライフプラン上、教育費負担の増加や転職などで年収が減少する予定がある場合などは、「返済額軽減型」が効果的です。
■繰り上げ返済を行う際の注意点
「繰り上げ返済は利息節約効果があるから、早く実行したほうがいい」
と思う方も多いですが、繰り上げ返済を行う際には注意点もあります。
住宅ローン控除のメリットとの比較
住宅ローンを借りるメリットとして、「住宅ローン控除」があります。
住宅ローン控除とは、「年末のローン残高 × 一定割合(入居した年により異なります)」をその年の所得税から控除でき、税金を減らすことができる制度です。
住宅ローン控除は、ローン残高が多いほど控除額が多くなるので、住宅ローン控除の適用期間中に繰り上げ返済をしてしまうと、本来受けられる控除が減ることになります。
繰り上げ返済を行う場合には、繰り上げ返済による利息節約効果と、住宅ローン控除による節税ではどちらが得かシミュレーションしてみましょう。
家計のキャッシュフローを確認する
住宅ローンの繰り上げ返済は、家計のリスクが増える可能性があります。
例えばお子様がいる世帯の場合、住宅購入後におけるお金の準備は、教育資金が優先されます。
繰り上げ返済を行った結果、住宅ローンの金利よりも高い教育ローンを借りることになったり、子ども自身が多額の奨学金に頼る必要が生じる可能性もあります。
繰り上げ返済を行い、新たに高金利のローンを組むよりも、低金利の住宅ローンを継続して自己資金を活用したほうが賢明です。
繰り上げ返済を行う際には、今後のキャッシュフローは確認をしましょう。
保障の減額に注意する
住宅ローンには「団体信用生命保険」という生命保険が付帯されています。
これはローン契約者に万が一のことがあったときに、ローン残高が0円になる生命保険です。
また最近では死亡時の保障だけではなく、ガンと診断された場合や、病気などにより働けない状態に備える保障が付いていることがあります。
これらのリスクに自分で生命保険に加入して備えるよりも、団体信用生命保険で備えた方が、金銭的な負担は少ないものです。
しかし繰り上げ返済を行いローン残高が減ることで、団体信用生命保険の保障額も減ることになります。
ご自身のライフプラン上、団体信用生命保険の保障が必要かどうかも確認しましょう。
運用資金が減るリスク
余裕資金ができた場合は、住宅ローンの繰り上げ返済ではなく、資産運用に使うという選択肢もあります。
低金利の影響で住宅ローンの金利は低く、繰り上げ返済による利息節約効果は限られます。
繰り上げ返済をせずに資産運用に回すことで、繰り上げ返済よりも資金効率が高くなる可能性もあります。
繰り上げ返済は「利息を節約する」という効果は期待できますが、事前に確認すべきポイントもありますので、よく検討した上で実行しましょう。
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